自分力を高めるファッション②
まだ戦争の爪あとが日本各地に残り、物が充分にない時代にファッション雑誌『それいゆ』を創刊し、洋服や料理、インテリアなど“美しい暮らし”を紹介して一世を風靡したたイラストレーターで人形作家の中原 淳一氏。その中原氏は、「ジュニアそれいゆ」56年5月号でこんなことを言っています。
《美しくなるということは、他の人たちをアッと言わせるような美しさを見せびらかすことではありません。また、決して贅沢なことをするというのでもありません。
身だしなみの本当の意味は、自分の醜い所を補って、自分の姿がいつも他の人々に快く感じられるように、他の人があなたを見る時に、明るくなごやかな気持ちになるためのものだということを忘れないで下さい》
つまりファッションとは、自らの思想やライフスタイルの表現であはあるけれど、けっして自己満足ではなく、周囲の人たちや社会とどういう関係性や距離感を取っていきたのかを表現するものだというのです。
極端な話をすれば、いくら好きだからといって、自分には似合うからといって、誰かのお葬式に最新流行のプレタポルテや派手なドレスで出席する人はいません。人間はたった一人で生きているわけではなく、家族、会社、地域社会などさまざまな社会的な仕組みに属しており、どんな状況であっても勝手気ままな振る舞いが許されるわけではないからです。
ファッションスタイルを考える時は、「自分はどんなファッションで何を表現したいのか?」と同時に、その服装はあなたに求められている社会的な「TPO(時間、場所、役割)にふさわしいのか?」も考えて下さい。